超漢字康煕字典 詳細解説

はじめに

超漢字のいちばんの特長は、言うまでもなく、最大150万字の文字が利用できることである。この特長を活かした超漢字用の辞書コンテンツの一つが、「超漢字康煕字典」である。

本解説では、康煕字典そのものについて簡単に説明したあと、実際に「超漢字康煕字典」でどのように康煕字典を閲覧できるのか、実際の画面例を交えながら解説していこう。

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康煕字典とは

「康煕字典」は、中国の清(しん)の時代に編纂された漢字の字典である。清朝の第四代皇帝康煕帝の命により、学者30人が5年の歳月をかけて歴代の辞書を元に集大成したものであり、1716年に完成した。オリジナルは木版によって印刷されており、全40巻からなる。親字として47,035字を収録している。これらの漢字は214の部首に分けられ、画数順に記載されている。現在我々が利用している漢和辞典も、214の部首分けや画数順の配列などの点で、この康煕字典の流れをくんでいる。

康煕字典は、明治以来の漢字の活字字体の典拠であるという意味で、国語学的には極めて重要なものである。現在でも、日本の漢字のうちで常用漢字表に含まれないものは、基本的には康煕字典の字体を拠り所とするように、2000年12月の国語審議会などで答申されている(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/kokugo/toushin/001218.htm 参照)。

「内府本」と「安永本」

「康煕字典」は、1716年に発行されて以来、各種の版が制作されている。

まず、清朝宮廷内の内務府で発行されたオリジナルは「内府本(ないふぼん)」、あるいは「武英殿本(ぶえいでんぽん)」と呼ばれる。それ以降、清朝あるいは中国国内だけでも、道光本(1827年)、湖北崇文書局本(1875年)、上海同文書局本(1884年)、商務印書館本 (1933年)、中華書局同文書局本(1958年)などが発行されている。

いっぽう、康煕字典は日本でも翻刻され、江戸安永年間に「日本翻刻康煕字典」、いわゆる「安永本(あんえいぼん)」(1780年)が発行されている。これは「内府本」を元にカタカナによる漢字の読みを加え、訓点と送り仮名を振って木版を起こし、いわゆる漢文の形にして日本人でも読みやすくしたもである。日本ではこの後も、江戸から明治期にわたり各種の版が発行され利用されてきた。

「超漢字康煕字典」では、これらの数多くある各種の版本のうち、特に貴重なオリジナルの「内府本」(東京大学東洋文化研究所蔵)、および日本翻刻の初版である「安永本」の2種類を収録している。このうち「内府本」は日本に数冊しか存在しないもので、原本を見ることは困難な、極めて貴重なものである。

康煕字典を再現

では、実際に画面例を交えながら、「超漢字康煕字典」ならではの特長をみていこう。

「超漢字康煕字典」では、「安永本」と「内府本」の全ページをそのままスキャンして収録し、その画像イメージを超漢字上で閲覧できるようになっている。

前述のように、「内府本」については、その貴重さゆえに、各ページを解体してスキャンすることが困難であり、綴じたままでスキャンされている。そのため、実際に字典を開いたときと同じように、右ページがウィンドウの右側に、左ページがウィンドウの左側に表示されている。

康煕字典(内府本)のウィンドウ

図1 : 康煕字典(内府本)のウィンドウ

「安永本」については、各ページを解体してから、スキャンしている。そのため、実際の字典を開いたときとは異なり、実際の右ページがウィンドウの左側に、左ページがウィンドウの右側に表示される。

康煕字典(安永本)のウィンドウ

図2 : 康煕字典(安永本)のウィンドウ

「安永本」と「内府本」とは、それぞれ異なる小物として別々に起動できるため、両者を同時に表示させ比較することもできる。

安永本(左)と内府本(右)を比較しているところ

図3 : 安永本(左)と内府本(右)を比較しているところ
右の内府本では「玄」が「欠画」になっているのがわかる。
「玄」は皇帝の名前に使われた文字であり、清の時代、皇帝の名前と同じ漢字を書くのをはばかって、字の一部を欠いた文字が用いられた。このように漢字の一部を欠くことを「欠画」とよぶ。

画像イメージは任意の倍率に拡大・縮小ができる。画像イメージの精度については、一般的な利用を想定した「超漢字康煕字典/標準版」と、原書の精緻な画像をより高い解像度で再現できる「超漢字康煕字典/高精度版」が用意されており、それぞれのニーズに合った製品を利用できるようになっている。例として、500%(辺比)に拡大したときの標準版の画像(図4)と高精度版の画像(図5)を示す。

図4 : 標準版の画像を500%に拡大したもの。

図4 : 標準版の画像を500%に拡大したもの。

図5 : 高精度版の画像を500%倍に拡大したもの。

図5 : 高精度版の画像を500%に拡大したもの。

超漢字の特長を生かした検索機能

「超漢字康煕字典」では、康煕字典のコンテンツ自体は画像ファイルとして収録されているが、超漢字の強力な文字検索機能と組み合わせて、康煕字典を簡単に引くことができる。

まず、康煕字典の中から任意の漢字をについて記述されたページを引く場合は、文字検索小物を起動し、コード一覧から選ぶなり、文字検索を実行するなりして、目的の漢字を選択状態にする。その後、新しく設けられた[外部辞書]メニューから、検索したい康煕字典を選ぶと、選択状態になっている漢字を含むページが表示される。

「漢」を検索したところ

図6: 文字検索小物で「漢」を検索し、外部辞書に安永本を指定して開いたところ。
「漢」の載っているページが自動的に開かれる。

すでに外部辞書として康煕字典のウィンドウが開いている状態では、目的の漢字を選択状態にしたあと、文字検索小物のウィンドウにある[外部辞書]スイッチをクリックすればよい。

「超」を検索したところ

図7 : 続けて文字検索小物で「超」を検索し、[外部辞書]スイッチをクリックしたところ
「超」の載っているページが自動的に開かれる。

逆に、康煕字典に表示されている文字を文字検索小物で検索したい場合は、[文字検索]スイッチをクリックする。すると、文字検索小物が起動して、その文字に関する文字情報が表示される。

「字」の文字情報

図8 : 文字検索で「字」の情報が表示された。

画像や文字情報の再利用にも対応

文字と画像を混在して扱える超漢字の特長を生かして、超漢字康煕字典のコンテンツも、トレーを介して他のアプリケーションで再利用できるように配慮されている。超漢字康煕字典のウィンドウ上では、[編集]メニューの[トレーへ複写]が有効になっている。これを選択すると、どの情報を複写するのかを選ぶためのパネルが現れる。

トレーへ複写する情報を選ぶウィンドウ

図9 : トレーへ複写する情報を選ぶウィンドウ

ここで複写したい情報を選択して[実行]スイッチをクリックすると、選ばれた情報がトレーに複写される。これを基本図形編集のウィンドウに[編集]メニューの[トレーから移動]または[トレーから複写]で貼り付けると、康煕字典のウィンドウの内容がそのまま複写される。

基本図形編集のウィンドウに複写した結果

図10 : 基本図形編集のウィンドウに複写した結果

康煕字典の字形は字体の典拠でもあるので、このような形で引用ができるのは非常に有用である。

より使いやすくするための機能

以上の特長に加え、超漢字康煕字典では、できるだけ自然な形で康煕字典を閲覧できるように、様々な工夫を行っている

さまざまなページ移動の方法をサポート

すでに巻やページがわかっている場合には、[ページ]メニューの[ページ指定]でページを指定してジャンプできる。

ページ指定のパネル

図11 : ページ指定のパネル

また、[次ページ][前ページ]スイッチによるページめくりや、[戻る][進む]スイッチにより履歴内での移動も可能である。特に[戻る][進む]スイッチによる移動は、基本ブラウザをはじめとした、ウェブブラウザでの操作と共通であり、ブラウザ感覚で字典内を移動できる。

操作パネル

図12 : ページ移動のスイッチなどが配置された操作パネル

画像ドラッグやホイールによるスクロール

超漢字康煕字典は、康煕字典の内容をそのままスキャンしたため、各ページは2ページ見開きの画像サイズになっており、かなり大きい。これをウィンドウの端にあるスクロールバーでスクロールするのは、特に高解像度の画面の場合、少々面倒である。そのため、超漢字康煕字典では、画像をドラッグして任意の方向に動かすことにより、直接画像をその方向にスクロールすることができるようになっている。実際に康煕字典のページを動かすように直感的に操作できるので、あまり違和感がない。また、ホイールマウスにも対応し、ホイールの回転によって画像をスクロールすることもできる。

しおりがつけられる

膨大な康煕字典の中から関心のあるページをいつでも瞬時に開けるように、超漢字康煕字典にはページにしおりをつける機能がある。しおりは「内府本」と「安永本」のそれぞれに独立して設定できる。[履歴]メニューからたどれる表示履歴と似ているが、[履歴]メニューの内容は、超漢字康煕字典を終了すれば消えてしまうのに対して、しおりは永続的に記録され、超漢字康煕字典を終了しても消えることはなく、次回康煕字典を起動したときにも利用できる。しおりに対しては表示順を変更したり、不要なしおりを削除したり、といった編集操作も可能だ。

しおりメニュー

図13 : しおりメニュー

登録の形態

超漢字康煕字典は、膨大な康煕字典の内容を収録しているため、その登録に必要なディスク容量も膨大である。

「超漢字康煕字典/標準版」の場合、「内府本」と「安永本」はそれぞれCD-ROM1枚分の容量となっている。そのため、標準版を登録するためには「内府本」「安永本」のそれぞれにつき、600Mバイト以上の空き容量が必要である。辞書コンテンツの場所は、超漢字の区画であればどこでもよいため、超漢字の区画が1つしかなく、空容量が少ない場合は、超漢字3に付属している System Selector や、超漢字4に付属している System Selector2 などを使って、Windows用の区画を縮小し、空いた区画をデータ区画として確保し、辞書コンテンツ収納用の区画として利用する方法がある。

どうしても空き容量が足りない場合は、辞書コンテンツをハードディスクに登録しないで、CD-ROM から読み込む方法もある。CD-ROM から読み込むため、スピードの面で難があるものの、超漢字康煕字典のすべての機能が問題なく利用できる。

「超漢字康煕字典/高精度版」の場合、「内府本」と「安永本」それぞれCD-ROM 3枚分の容量となっている。そのため、高精度版を登録するためには「内府本」「安永本」のそれぞれにつき、1.8Gバイト程度の容量が必要である。実際の運用では、「超漢字康煕字典/高精度版」のみの登録だと、小さい画像サイズで表示したときに画像の圧縮が発生し、レスポンスや画像の質の面で幾分問題がある。このため、「超漢字康煕字典/高精度版」には「超漢字康煕字典/標準版」も含まれており、「超漢字康煕字典/標準版」「超漢字康煕字典/高精度版」の両方を登録することを勧めている。「内府本」と「安永本」のそれぞれについて、標準版と高精度版の両方を登録すると、超漢字3の場合は、1区画の容量は4Gバイトまでという超漢字区画の制限を越えてしまう。そのため、「超漢字康煕字典/標準版」の辞書コンテンツはシステム区画に登録し、「超漢字康煕字典/標準版」の辞書コンテンツは別途データ区画に登録したり、「内府本」「安永本」それぞれにデータ区画を用意して登録したり、といった対応が必要である。超漢字4の場合は、1区画の容量は120Gバイトまで設定できるので、康煕字典の辞書コンテンツ専用の区画を5Gバイト用意する、という対応ができる。なお、高精度版でも、辞書コンテンツを CD-ROM から読みこんでの運用も可能であるが、CD-ROM が3枚に分かれているため、CD-ROM の入れ替えが発生してしまう。運用は少々面倒になるだろう。

いずれにせよ、辞書コンテンツをハードディスクに登録して軽快に使いたい場合は、超漢字の区画の空容量を十分に確保する必要がある。

おわりに

以上の解説で紹介したように、「超漢字康煕字典」は、康煕字典の全ページのイメージをパソコンの画面上に再現することで、「康煕字典」を誰でも手軽に閲覧することができるソフトウェアである。また、超漢字が得意とする強力な文字検索機能を生かして、必要な漢字を素早く検索して該当ページを表示したり、任意のページの内容を引用したりといった、実際の康煕字典以上の使い勝手を実現している。

「超漢字康煕字典」を、多漢字の海を渡る良きパートナーとして存分に使いこなしていただきたい。

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