デバイス名は "power" 1 つに固定。
nowait モードは意味を持たず、無視される。

8.2 固有機能

ハードウェアの電源管理機能を使用して以下の機能を実現する。
- 電源状態の取り出し。
- 電源制御モードの設定および取り出し。
- 各種の電源管理に関連する事象の検出、および通知。
- サスペンド状態への移行、および復帰(レジューム)処理。
- アイドル(無負荷)時の低消費電力状態への移行機能
電源状態として以下を定義する。
電源オフ状態
電源が完全にオフされて、システム全体が停止している状態。この状態への移行は電源管理ではサポートしない。
通常動作状態
システム全体が正常に動作している状態。
以下のようなデバイス個別の低消費電力状態に関しては、電源管理では特に関知せず、通常動作状態とみなす。
- ハードディスクの自動モーターオフ。
- LCD のオフ。
- CPU の低クロック移行。
- その他、デバイス個別の低消費電力状態。
ただし、アイドル ( 無負荷 ) 中に CPU を停止して低消費電力状態に移行する機能は電源管理でサポートする。
スタンバイ状態
システム全体が低消費電力状態で動作または一部停止している状態。
この状態は電源管理では積極的にはサポートしない。
サスペンド状態
電力消費を最低にして、システム全体が停止している状態で、元の状態に復帰(レジューム)することができる。
通常は、メモリ内容を保持するための最低限の電源が供給されているが、ハードディスクにメモリ内容を保存して電源を完全にオフするハイバーネーション状態もサスペンド状態に含まれる。

サスペンド状態への移行要因により以下を定義する。

自動サスペンド:
ユーザ操作が一定時間ないときに自動的にサスペンド状態に移行すること。
強制サスペンド:
スイッチの操作などによるユーザの指示によってサスペンド状態に移行すること。
緊急サスペンド:
電源切れなどにより、自動的に緊急にサスペンド状態に移行すること。

8.4 属性データ

以下の属性データをサポートする。

R	読み込みのみ可
W	書き込みのみ可
RW	読み込み / 書き込み可

/* power データ番号 */
typedef enum {
    /* 共通属性 */
    DN_PWEVENT    = DN_EVENT,
    /* 個別属性 */
    DN_PWSTATE    = -100,
    DN_PWMODE     = -101,
    DN_PWREQUEST  = -102,
} PowerDataNo;

DN_PWEVENT :

事象通知用メッセージバッファID (RW)

data:   ID

事象通知用メッセージバッファID を設定、または取り出す。

DN_PWSTATE :

電源状態の取り出し (R)

 data:   PowerState[0]:  全体の状態
 PowerState[1]:  バッテリユニット 1 の状態
 PowerState[2]:  バッテリユニット 2 の状態

typedef struct {
    UW  charge:8;       /* バッテリー残り容量   */
                        /* 0～100(%), 255:不明  */
    BatKnd  batkind:8;  /* バッテリーの種類 */
    PowCon  battery:2;  /* バッテリー接続状態   */
    PowCon  extpw:2;    /* 外部(AC)電源状態 */
    UW  subbat:1;       /* 副電池異常のとき 1   */
    UW  reserve:11;     /* 予約:常に0       */
} PowerState;

typedef enum {
    BK_none = 0,        /* バッテリなし     */
    BK_DRY  = 1,        /* 乾電池       */
    BK_NiCd = 2,        /* ニッカド電池     */
    BK_NiMH = 3,        /* ニッケル水素電池 */
    BK_unknown = 255    /* 不明         */
} BatKnd;

typedef enum {
    PC_DISCONNECT   = 0,    /* 切断中 / 未使用  */
    PC_CONNECT  = 1,        /* 接続中 / 供給中  */
    PC_CHARGE   = 2,        /* 充電中       */
    PC_unknown  = 3         /* 不明         */
} PowCon;

現在の電源状態を取り出す。
バッテリユニット数 <= 1 のときは、 PowerState[0] のみが取り出される。バッテリユニット数 > 1 のときは、要求したデータサイズを超えない範囲で、 PowerState[0],[1],[2] が取り出される。電源の供給状態に応じて以下の値となる。

	`charge`	`batkind`	`battery`	`extpw`
AC のみ	0	`BK_none`	`PC_DISCONNECT`	`PC_CONNECT`
AC + バッテリ	0～100	`BK_xxx`	`PC_CHARGE`	`PC_CONNECT`
AC + バッテリ	100	`BK_xxx`	`PC_CONNECT`	`PC_CONNECT`
バッテリのみ	0～100	`BK_xxx`	`PC_CONNECT`	`PC_DISCONNECT`
不明	255	`BK_unknown`	`PC_unknown`	`PC_unknown`

DN_PWMODE :

電源制御モード (RW)

data:
typedef struct {
    UW  exist:1;    /* 電源管理機能の有無   */
    UW  enable:1;   /* 電源管理対応     */
    UW  idle:1;     /* 低消費電力モード */
    UW  standby:1;  /* 自動スタンバイ   */
    UW  suspend:1;  /* 自動サスペンド   */
    UW  ringrsm:1;  /* リングレジューム */
    UW  rsv1:2;     /* 予備: 常に0      */
    UW  inhibit:1;  /* 使用禁止         */
    UW  reserve:23; /* 予備: 常に0      */
} PowerMode;

現在の電源制御モードを設定、または取り出す。

`exist`	電源制御機能の有無、または利用の可否。 0 : 無(利用不可)、1 : 有(利用可)。
`enable`	電源制御機能への対応。 0 : 対応しない、1 : 対応する。
`idle`	アイドル(無負荷)時の低消費電力状態への移行。 0 : 禁止、1 : 許可
`standby`	自動スタンバイ状態への移行。 0 : 禁止、1 : 許可
`suspend`	自動サスペンド状態への移行。 0 : 禁止、1 : 許可
`ringrsm`	リングレジューム機能。 0 : 禁止、1 : 許可
`inhibit`	電源管理機能の使用を完全に禁止。 0 : 使用許可、1 : 使用禁止

自動スタンバイ / 自動サスペンドが禁止されていても、強制スタンバイ / 強制サスペンドは有効となる。
設定が禁止されている項目の設定は無視される。

上記の設定による実際の動作はハードウェアに大きく依存する。

DN_PWREQUEST :

電源制御要求 (W) data: typedef enum { PW_SUSREJECT = 0, /* サスペンド要求拒否 */ PW_SUSREQ = 1, /* サスペンド要求 */ } PowRequest; 電源制御要求を行う。 PW_SUSREJECT : DE_POWEROFF, DE_POWERSUS の事象通知によるサスペンド要求を拒否する。事象通知がなかった時は何もしない。 PW_SUSREQ : 強制サスペンドを要求する。 強制サスペンドが禁止の時は何もしない。

8.5 固有データ

なし

8.6 基本操作

`OPEN`	特に何もしない。ハードウェアの初期化は起動時に行われる。
`CLOSE, CLOSEALL`	特に何もしない。
`ABORT`	特に何もしない(待ちに入ることはないため)
`READ / WRITE`	(上記参照)
`SUSPEND / RESUME`	特に何もしない。ただし、サスンペンド中の動作は事象検出の動作は行われない。

8.7 事象通知

以下の事象を通知する。

typedef struct {
    DevEvtKind  kind;      /* 事象種別     */
    ID         devid;      /* デバイス ID  */
    PowerState  stat;      /* 電源状態     */
} PowerEvt;

kind:   DE_POWEROFF     0x31    電源スイッチオフ(強制サスペンド)
        DE_POWERLOW     0x32    電源残量警告
        DE_POWERFAIL    0x33    電源異常(緊急サスペンド)
        DE_POWERSUS     0x34    自動サスペンド
        DE_POWERUPTM    0x35    時計更新

DE_POWEROFF :

電源スイッチなどのユーザの操作による強制サスペンド要求が発生したことを通知する。

stat: 無効(不明状態)

DE_POWERLOW :

電源の残量が一定値 ( 5 % 程度 ) 以上から以下に遷移したことを通知(警告)する。
通知される残量の具体的な値はハードウェアや実装に依存する。

stat: 有効

DE_POWERFAIL :

電源の残量がわずかのため、緊急サスペンド要求が発生したことを通知する。

stat: 無効(不明状態)

DE_POWERSUS :

ユーザ操作が一定時間ないことによる自動サスペンド要求が発生したことを通知する。

stat: 無効(不明状態)

DE_POWERUPTM :

システム時計の更新要求が発生したことを通知する。実際に更新が必要かどうかに無関係に、周期的に通知されることもある。

stat: 無効(不明状態)

8.8 エラーコード

デバイスドライバ共通仕様を参照のこと。

8.9 インプリメント依存事項 ( PC/AT 版 )

電源管理ドライバ

電源管理ドライバでは、APM BIOS を使用してすべての機能を実現しているため、実装されている APM BIOS の機能、および各種の設定に大きく依存する。
APM BIOS 1.1 以上にのみ対応する。
APM BIOS の初期化はシステムのブート処理で行い、電源オフ状態への移行は、電源管理ドライバとは無関係に BMS から APM BIOS を実行する。
電源制御機能へ対応しない状態では、APM BIOS との接続は行わないため APM BIOS 独自で OS とは無関係に電源管理が行われる。
電源管理機能の使用禁止(inhibit)の状態では、ハードウェアの障害を回避するために、APM BIOS の呼び出しを一切行わない。
電源制御機能へ対応する状態では、定周期(1 秒)で、 APM BIOS のイベント取り出しのポーリングを行い、対応する事象を発生する。
APM BIOS からのスタンバイ要求に関しては、デバイスイベントを発生せずに内部で処理する。
アイドル ( 無負荷 ) 時の低消費電力状態への移行機能に関しては、対応する APM BIOS を実行うために、中心核から直接コールできるインタフェースを提供する。
DE_POWERUPTM ( システム時計の更新要求 ) の事象に関しては、安全のため、必ず周期的に発生するようにしている。

電源管理に対応しないとき:
1 分周期で発生。
電源管理に対応するとき :
1 時間に 1 回以上発生。